オマーン国における低炭素鉄源の事業化検討について

2023年4月10日

株式会社神戸製鋼所

当社は、当社が保有するMIDREX🄬プロセス(※1)を活用した直接還元鉄HBI(※2)の製造・販売 (以下、低炭素鉄源事業)の事業化について、三井物産株式会社(以下、三井物産)と共に検討を進めてきました。

今般、当社および三井物産は、オマーン国の特別経済地区を管理する行政機関であるOPAZ(正式名称Public Authority for Special Economic Zones and Free Zones)と低炭素鉄源事業の推進に関する包括的覚書を締結すると共に、ドゥクム特別経済地区の港湾開発・管理を担う会社であるPort of Duqm Company S.A.O.C.と同地区の土地予約契約を締結しました。また、同国エネルギー・鉱物資源省と本事業に必要となる天然ガスの供給に関わる詳細条件に付き協議中です。

オマーン国ドゥクム特別経済地区での事業用地確保と現地関係者の協力体制確立に目途が立ったことを受け、当社および三井物産はオマーン国での低炭素鉄源事業の本格的な検討を加速してまいります。

オマーン国においてはMIDREX🄬プロセスで使用する天然ガスが豊富に産出することに加えて、オマーン・ビジョン2040(※3)に基づき再生可能エネルギーやグリーン水素の供給をエネルギー政策の柱の一つとしており、今後のグリーン化の観点からも低炭素鉄源事業に理想的な立地と考えています。今回の低炭素鉄源事業においては、当面は還元剤として天然ガスを使用する予定ですが、将来的には水素への転換やCCUS等の適用による更なる低炭素化も検討いたします。

生産規模は、年産500万トンの直接還元鉄製造を検討しており、将来的には更なる拡張についても検討いたします。

気候変動対策として鉄鋼業におけるCO2排出削減は大きな課題です。KOBELCOグループは、2021年5月に発表したKOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)の公表タイミングにて、2050年ビジョンとして、生産プロセスにおいては「カーボンニュートラルへ挑戦し、達成を目指す」こと、また技術・製品・サービスによるCO2排出削減貢献は「1億トン以上」を掲げました。すでに、多様な事業を営む総合力を生かして高炉工程でのCO2排出量を大幅に削減できる技術の実証に成功(※4)しており、この技術を活かした低CO2高炉鋼材 “Kobenable Steel”(※5)を国内で初めて実用化しました。また直接還元鉄の分野では、天然ガスを還元剤とするMIDREX NGTMに加え、天然ガスを最大100%まで柔軟に水素に置き換えることが出来るMIDREX FlexTMや、水素を100%還元剤として用いるMIDREX H2TMを商業化しています。

当社グループは、鉄鋼事業で培ってきた経験・知見及びMIDREX🄬プロセスをはじめとするエンジニアリング事業におけるキーテクノロジーと、資源分野・エネルギー分野においてグローバルに事業展開を行っている三井物産の総合力を掛け合わせることにより、鉄鋼業の低炭素化およびカーボンニュートラル社会の実現に向け取り組んでまいります。

  • ※1:MIDREX🄬プロセスは、天然ガスを改質した水素リッチガス又は水素を還元剤として、粉鉱石を加工したペレット等をシャフト炉で還元し、還元鉄を製造します。
    従来の天然ガスベースMIDREX🄬直接還元鉄プラント(MIDREX NGTM直接還元鉄プラント)は、世界で90基以上が稼働しており、天然ガスを改質した水素リッチガスを還元剤として用いることにより、高炉法に比べ製鉄工程でのCO2排出量を最大40%削減できます。また、当社はMIDREX NGTMに加え、天然ガスを最大100%まで柔軟に水素に置き換えることが出来るMIDREX FlexTMや、水素を100%還元剤として用いるMIDREX H2TMというプロセスを保有しています。MIDREX FlexTMやMIDREX H2TMでは100%水素を還元剤として用いることにより、ほぼCO2排出量ゼロでの稼働が可能です。

  • ※2:直接還元鉄(DRI:Direct Reduced Iron)。鉄鉱石を還元した鉄鋼原料。不純物の少ない清浄鉄源であり、高級スクラップや銑鉄の代替品として主に電気炉で(近年は高炉や転炉でも)鉄源として使用されています。輸送や長期保存に対応するためにDRIを熱間成形したものを、HBI(Hot Briquetted Iron:熱間成形還元鉄)といいます。

  • ※3:オマーン政府は、オマーン・ビジョン2040の策定等を通じ、国内経済の多様化や雇用促進を図っています。石油・天然ガス以外の新たな産業を発展させ地域のハブとなることが目標に掲げられており、再生可能エネルギーやグリーン水素事業が一つの柱と位置付けられています。

  • ※4:エンジニアリング事業のミドレックス技術(天然ガスを使った還元鉄製鉄法であり、世界の約 80%(還元 鉄全体では約 60%)を占めるリーディングプロセス。製鉄工程での CO2排出量を 20~40%抑制できることなどが特長。)を用いて製造した HBI(熱間成形還元鉄)を加古川製鉄所の高炉に多量に装入することで、高炉からの CO2排出量を大幅に削減できる技術。

  • ※5:“Kobenable Steel”は、神戸製鋼独自の高炉向け CO2低減ソリューションを活用することで、 従来の品質を維持したままで、低 CO2鋼材の提供を可能とするものです。

2023年4月9日 オマーン国マスカットにて

2023年4月9日 オマーン国マスカットにて
(前列左から)福田哲也氏(三井物産株式会社常務執行役員金属資源本部長)、H.E. Dr. Ali bin Masoud Al Sunaidy(OPAZ会長)、元行正浩(当社執行役員エンジニアリング事業部門長)
(後列左から)山本条太氏(駐オマーン特命全権大使)、H.E. Eng. Ahmed bin Hassan Al Dheeb
(OPAZ副会長)、H.E. Ibtisam Ahmed Said al Farooji(OPAZ取締役 兼 商工業・投資促進省次官)

集合写真

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